我慢しないことのススメ 『新しい市場のつくりかた』三宅秀道

こんばんは。黒田正一です。

久しぶりの書評です。

 

 突然ですが、私はあまり我慢が得意ではありません。面倒くさい事を継続するのも苦手だし、暑い時や寒い時は人より早くエアコンを稼働させてしまいます。

「私もそうだよ!」という人はこの本を読むとかなり勇気づけられるかもしれません。

 

今回紹介する本は、三宅秀道氏著『新しい市場のつくりかた~明日のための「余談の多い」経営学』です。

新しい市場のつくりかた

新しい市場のつくりかた

 

 著者は大学で経済学の講師をされていて、企業のコンサルティングもされています。全11章からなり、それぞれの章ではいろいろな画期的な商品の開発から普及までの事例が紹介されています。

どの事例も新しい視点や教訓が得られてものすごく面白かったのですが、今回はそのうち私が最も感動した事例の1つを簡単に紹介します。

 

 

第9章「ビジネスの外側に目を向けよ」で書かれている事例です。

身体の麻痺を患っている障碍者は車椅子で生活しますが、ずっと同じ姿勢で座っていると背中が痛くなり、体をねじってしまい結果として身体の変形を引き起こしてしまっていました。

そんな中、大学と企業の共同開発で快適な車椅子を開発することになりました。座っている時に体のどこに力がかかっているかを研究した結果、椅子の背面のカーブを従来の椅子とは異なる形状にすべきことがわかりました。

そしてその知見と技術は障碍者用の車椅子だけでなく健常者用の椅子にも応用されていて、健常者に快適な座り心地を提供しています。

 実は健常者も決して従来の椅子で快適だったわけではないのですが、多少体が痛くなっても我慢する体力があるから椅子の形状に疑問を持つことがなかったのです。

一方障碍者は同じ姿勢で座り続けることが「できなかった」からこそ、椅子を根本から見直すことがきっかけができ、千年以上変わらなかった椅子の形を進化させることができたのです。

我慢できないこと、弱いことが進化の引き金となったのです。

 

 

 この本の書評とはずれますが、もうちょっとこの話を拡大解釈してみます。

突然ですが「才能」という言葉がありますよね。

一般的には、才能はあったほうがいいと思われています。もしくは、才能なんて無くていいという人も「努力をする楽しさを味わえるから」とかそんな理由を挙げます。

しかし上記の事例を踏まえて考えると、才能が無いということは、才能がある人が当たり前にできている技術・技能の本当の意味や本質を問い直す機会が与えられているということです。才能がある人はそんな問い直しはしない、というよりできないのです。当たり前すぎて気づかないのですから。

そしてここからが重要なのですが、問い直してそれを乗り越えた結果、才能がなかった人は才能がある人に「追いつく」のではなく「遥かに追い越す」ことができるのです。

たとえば、人類の歴史を考えてみてください。まわりの動物に比べて体も小さく弱かった人類は、それゆえ必要にせまられて工夫して武器を作り出してなんとか動物と戦うことができるようになり、今や他の動物が逆立ちしても勝てないくらいの存在になりました。

何かの分野について才能・素質が無いということは、ある意味その分野に革命を起こすチャンスが与えられているということでもあるのです。

 

だいぶ脱線してしまいましたが、他の章も人生観がかわるかもしれないほど面白いです。ぜひ読んでみてください。