源氏はなぜ平氏に勝てたのか?源頼朝の凄さとは。

こんばんは。黒田正一です。

 

『いい国(1192)作ろう鎌倉幕府。』

私は中学高校でそう習ったのですが、最近の歴史教科書では新学説に従って

『いい箱(1185)』になってると聞きました。

実は鎌倉幕府の成立年代の解釈がぶれるのも、源頼朝がいかに革新的だったかの証左の1つなのです。その理由は後で述べます。

 

 本の紹介

今回紹介するのは井沢元彦氏著『逆説の日本史<5>中世動乱編 源氏勝利の奇跡の謎』です。

逆説の日本史〈5〉中世動乱編 (小学館文庫)

逆説の日本史〈5〉中世動乱編 (小学館文庫)

 

 著者の井沢元彦氏は、歴史教科書に乗っているような定説に疑問を感じ、それぞれの時代の人物・事件・背景について自らの解釈を論理的・実証的に記した『逆説の日本史』シリーズを書かれています。

著者の理論について例を挙げると

  • 邪馬台国大和朝廷
  • 織田信長戦国大名の中で唯一確かなビジョンを持って理想の国を作ろうとした。
  • 黒船来航は単に強い船が来たってことじゃなく、建国以来ずっと日本人が持っていた安全保障の観念を根底からひっくり返される事件だった。

1992年から連載が始まったこの壮大なシリーズは第1巻の古代倭国から始まり、単行本では第22巻の明治維新編まで、文庫版では第19巻の幕末編まで刊行されています。(2016年9月現在)

更には最近、同じように学会の定説への批判として『逆説の世界史』というシリーズを古代エジプトから始めるという滅茶苦茶壮大なプロジェクトを手がけられています。

 

 面白そうだけどそんなに大量の本を読むのはちょっと…と言う方もご安心ください。

井沢元彦氏の独自の歴史観をコンパクトに1冊にまとめた本があります。

日本史集中講義―点と点が線になる (祥伝社黄金文庫)

日本史集中講義―点と点が線になる (祥伝社黄金文庫)

 

 私もこの本から読んで、面白そうだと思った時代があったら『逆説の日本史』の当該巻でじっくり読むスタイルにしています。

もちろん、どの巻から読んでも入りやすいような親切な書き方になっています。 

みどころ

 今でこそ日本人といえばサムライ、みたいに武士は格好いいものとされていますが、平安時代天皇と貴族が政治を支配していて、武士は低い身分で被差別階級だったのです。

そんな中、まず武士として政治の中心に入ることに成功したのは平清盛率いる平氏です。

低い身分でありながら貴族と対等にやりあう平氏、凄いです。武士の出世頭です。

 

ということは武士の憧れの的?と思いきや…

平氏政権の急速な滅亡の大きな理由の一つに、武士による政権でありながら武士のための政権でなかったことがある。

逆説の日本史<5>中世動乱編 文庫版15P)

平氏が政権に入った様子を改めて眺めてみれば、武士の身分が高くなったのではなく、単に平氏が貴族の仲間入りをしたも同然になっていたのでした。

そりゃ平氏以外の武士は不満に思いますよね。

 

この点源頼朝は違います。頼朝は一度平氏に戦で負けてから関東(当時は京の都から見たら辺境の地)に流罪になり、周りにいた関東の武士とふれあっていく中で武士の気持ちを深く理解するようになります。

 

平氏に不満を持つ武士たちを味方につけて勢力を伸ばしていく中で、頼朝は平氏とは逆に「武士のための政権」を作りはじめます。

 

その政権の場所は京から離れた鎌倉であり、朝廷からもらう身分も「征夷大将軍」という、本来政治の中心に関われるものではない役職でした。

頼朝からすれば朝廷で仕事をすることに興味はないのだから大事なのは

「しれっと朝廷の目が届かないところでやりたい放題できる役職」

だったのです。

 

征夷大将軍を含め、頼朝は今までにないやり方で(朝廷や貴族が気づかないくらい)地味にじわじわと実質的な権利を得ていったので

「じゃあ日本の政治のトップにたったのはどの時点なんだ?」

というのがわかりにくくなっているのです。

『幕府』というのも遠征した司令官(征夷大将軍)が臨時に作った作戦本部、って意味ですからね。頼朝によってうまい具合に政権そのものに作り変えられてしまいましたけど。

 

 そして重要な事に、源頼朝は源氏だけでなく仲間の武士たちを政治の中心にしようとします。そうなると、平氏以外の武士たちはこぞって源氏の味方をしたくなりますよね。

私の考察

 さて、だいぶ解説が長くなってしまいましたが、この頼朝の偉業を現代にたとえてみるとどうなるでしょうか?

 

リア充と非リア充という対立軸がありますが、非リア充から努力してリア充の仲間入りができ、今までの非リア充仲間に対して「お前らも頑張れよ」と言ったのが平清盛

それに対して、自分は非リア充のまま非リア充自体の評価を高めて

リア充>非リア充

という構図自体をなくしてしまったのが源頼朝

※一応言っておくと前者の平清盛パターンも十分凄いことなんですよ。源頼朝が凄すぎるだけです。

おわりに

鎌倉編以外にも、黒船編なども面白いです。

井沢元彦氏の理論は学会の定説とは違うものの、決して荒唐無稽ではなく確かな論拠があり、かつエキサイティングです。

 

歴史というのが単調な年表に沿った政権の移り変わりではなく、価値観のどんでん返しが所々で起きるダイナミックなものであることがわかります。

そういう目で現代を見ると、今私達が絶対だと思っている価値観も近いうちにひっくり返るかもしれないと思えてきます。

 

好きな時代があったら、その巻から『逆説の日本史』を読んでみてもいいと思います。

勉強になるだけでなく、歴史がいっそう好きになれますよ!